Peter Rabbit(ピーター・ラビット)の作者、Beatrix Potter(ビアトリクス・ポター)は実際の風景を絵本の中にたくさん登場させています。
彼女はどの景色を描き、現在はどのようになっているのか、絵本と実際の風景を比べてみました。
ビアトリクス・ポターの仕事場、ヒル・トップ
Hill Top(ヒル・トップ)が登場するおはなし
- The Tale of Tom Kitten (こねこのトムのおはなし)
- The Tale of Samuel Whiskers or the Rolly-Poly Pudding (ひげのサムエルのおはなし)
- The Tale of the Pie and the Patty Pan (パイが2つあったおはなし)
特にHill TopはMrs. Tabitha Twitchit(タビタおくさん)の家として多くの場面が描かれています。
Hill Topを訪れた時の記事はこちらをご覧ください。
ヒル・トップの玄関
BEATRIX POTTER™ and PETER RABBIT™ © Frederick Warne & Co.,
こねこのトムのおはなし23ページの挿絵です。上等な洋服を着せられたこねこのTom(トム)、Moppet(モペット)、Mittens(ミトン)が外に出されるシーンです。
写真では白い藤の花が咲いていますが、絵本の中ではシャクナゲが描かれています。植えられている植物が年月に経つにつれ変わったのかもしれません。
でも三角屋根の玄関はそのまま残っています。
ヒル・トップの玄関ドア
BEATRIX POTTER™ and PETER RABBIT™ © Frederick Warne & Co.,
ひげのサムエルのおはなし21ページの挿絵です。Cousin Ribby(タビタおくさんのいとこのリビー)が訪ねてきた場面です。
絵にはドアノッカーがないですが、取っ手と扉の模様は同じ形をしています。
石の床も描かれていますが、実際も硬い石の床で冬は寒いだろうと思います。
ヒル・トップの玄関ホールとキッチン
BEATRIX POTTER™ and PETER RABBIT™ © Frederick Warne & Co.,
ひげのサムエルのおはなし29ページの挿絵です。ネズミのAnna Maria(アナ・マライア)がねり粉を取りにキッチンへ走っている場面です。
写真の食器棚の引き出しや飾りの形が忠実に描かれています。飾られている青いお皿も当時のままだという事が挿絵を見るとわかります。
この食器棚は挿絵と同じ場所に今もありますが、隣には椅子ではなく振り子時計が今は置かれています。
BEATRIX POTTER™ and PETER RABBIT™ © Frederick Warne & Co.,
ひげのサムエルのおはなし37ページの挿絵です。こねこのトムが押し入れに閉じ込められるのが嫌で煙突に隠れようとしているシーンです。
実物は思ったより小さかったですが、周りの黒いレンガもかまどもそのまま描かれています。絵が猫のサイズだから大きく思えたのかもしれません。
BEATRIX POTTER™ and PETER RABBIT™ © Frederick Warne & Co.,
BEATRIX POTTER™ and PETER RABBIT™ © Frederick Warne & Co.,
同じ炉がひげのサムエルのおはなし8ページと、70ページにも描かれています。
8ページはタビタおくさんがいとこのリビーにトムが見つからないと心配しているシーン、70ページは助け出されたトムを洗ってやっているシーンです。
70ページは部屋を明るく描いていますが、実際はかなり暗く感じました。ネズミに捕まったトムが助け出されたという安心感を表していたのかもと思います。
BEATRIX POTTER™ and PETER RABBIT™ © Frederick Warne & Co.,
こねこのトムのおはなし51ページの挿絵は、ひげのサムエルのおはなし70ページの挿絵と同じ窓を描いています。窓の隣の鏡も同じです。
今は赤いカーテンが窓にかかっていますが、Beatrix Potterが描いた時は水色だったことがわかります。
挿絵では花が飾られている所に腰かけることができます。
The Tale of Tom Kittenの絵本が置いてあるので、部屋の様子と挿絵を実際に比べ見ることができます。
ヒル・トップ1階の階段口
BEATRIX POTTER™ and PETER RABBIT™ © Frederick Warne & Co.,
こねこのトムのおはなし11ページの挿絵です。ゲストが訪問するのでこねこたちを2階で着替えさせるために連れていく場面です。
家具の位置が異なりますが、扉の模様や色、壁の手すりが同じです。
ヒル・トップの階段
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ひげのサムエルのおはなし32ページの挿絵です。Samuel Whiskers(ひげのサムエル)がキッチンからバターを取って走っている場面です。
ネズミの体に合わせて段差が低くなっていますが、柱の模様が同じです。
BEATRIX POTTER™ and PETER RABBIT™ © Frederick Warne & Co.,
ひげのサムエルのおはなし15ページの挿絵です。こねこのトムを探すタビタ奥さんの姿が描かれています。
踊り場の大きな振り子時計と窓の手前にある手すりが本当にそっくりです。
カーテンと階段に敷かれているカーペットも当時のものと似ていて、物語の中に入ってしまったかのようです。
BEATRIX POTTER™ and PETER RABBIT™ © Frederick Warne & Co.,
ひげのサムエルのおはなし56ページです。ひげのサムエルがタビタ奥さんのめん棒を転がして自分の巣に運んでいる場面です。
階段の描写、振り子時計の位置、カーテンと大きな窓、全てが同じです。
ただ1か所だけ違うのは窓の前に石像が置いてあることです。踊り場を飾るために置いたのだろうと思いますが、挿絵と異なるのであまり必要ではないように思います。
ヒル・トップの2階の部屋
BEATRIX POTTER™ and PETER RABBIT™ © Frederick Warne & Co.,
こねこのトムのおはなし19ページの挿絵です。タビタおくさんがこねこたちに洋服を着せようとする場面です。
タンスと窓の位置が異なりますが、タンスの形と上に置かれている鏡が同じものです。猫のサイズなので挿絵では小さく見えますが、窓の雰囲気も同じです。
ビアトリクス・ポターが新しい部屋と呼んだ部屋
BEATRIX POTTER™ and PETER RABBIT™ © Frederick Warne & Co.,
Beatrix PotterがNew Room(新しい部屋)と呼んだ部屋から見える景色は、ひげのサムエルのおはなし32ページに描かれています。
こねこのトムが煙突の上から見た景色なので、実際は屋根の上から見なければ同じ景色にはなりませんが、丘を越えていく道やなだらかな丘の形が今も昔も変わらないことがわかります。
Beatrixは毎日この美しい景色を見ており、それと同じ景色を私も見ていると思うと感慨深いです。
村の子供たちが遊んだドールハウス
BEATRIX POTTER™ and PETER RABBIT™ © Frederick Warne & Co.,
2ひきのわるいねずみのおはなし8ページの挿絵です。Lucinda(ルシンダ)とJane(ジェーン)という人形の家としてBeatrix Potterは描きました。
Hill Topが今のように有名になる前、子供たちは実際にこのドールハウスで遊んでいたそうです。ドールハウスの中の小物が精巧でかわいらしいです。
棚の中に置かれていたティーポット
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パイが2つあったおはなし42ページの挿絵です。テーブルに置かれているポットは今はHill Topの食器棚に保管されています。
このティーポットはEdward VII(エドワード7世)戴冠記念のもので、Beatrixが気に入っていたそうです。
ヒル・トップの庭
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あひるのジマイマのおはなし12ページの挿絵です。この挿絵に出てくる男の子と女性も実際の人物をモデルにしています。
白い巣箱、緑色の門、スレートで作られた壁が一致しています。奥にHill Topの玄関も見えています。
ヒル・トップ敷地外の井戸
BEATRIX POTTER™ and PETER RABBIT™ © Frederick Warne & Co.,
パイが2つあったおはなし59ページの挿絵です。リビーが割られているパイ皿を見て途方に暮れている表情がかわいくて好きな絵です。
この井戸は観光客が入れる場所にはありません。Hill Topでは今も個人が農場を経営しており、その人たちの住む敷地内にあります。
公共の場所と個人の敷地はゲートで仕切られており、そのゲート越しに井戸を見ることができます。
ニア・ソーリー村のランドマーク、白い木戸
BEATRIX POTTER™ and PETER RABBIT™ © Frederick Warne & Co.,
こねこのトムのおはなし32ページの挿絵です。こねこのトムたちがあひるたちに出会う場面です。
バス停に近い所にあるので、すぐに見つけることができます。
白い木戸が黒いスレートの壁に映えて印象的な風景で、向こうにあるHill Topに思いを馳せます。
BEATRIX POTTER™ and PETER RABBIT™ © Frederick Warne & Co.,
こねこのトムのおはなし27ページの挿絵です。モペットとミトンが白い木戸のある石壁に乗って遊んでいます。
その向こうに見えるのがCastle Cottage(カースル・コテージ)と丘へ続く道です。
ビアトリクス・ポターもこのパブに通ったかも?タワー・バンク・アームズ
BEATRIX POTTER™ and PETER RABBIT™ © Frederick Warne & Co.,
あひるのジマイマのおはなし44ページの挿絵です。Near Sawrey(ニア・ソーリー)唯一のパブTower Bank Arms(タワー・バンク・アームズ)が描かれています。
挿絵では馬車が描かれている場所には、いつも2、3台の車が駐車しています。
入り口の三角形の屋根と時計がそのままです。パブの中も伝統的な雰囲気が残っていて、居心地が良いです。
Tower Bank Armsを訪れた時の記事はこちらをご覧ください。
ビアトリクス・ポターとご近所さん、B&Bバックル・イート
BEATRIX POTTER™ and PETER RABBIT™ © Frederick Warne & Co.,
こねこのトムのおはなし35ページの挿絵です。あひるたちがこねこのトムたちと出会った場面です。
あひるたちの後ろにある白い家がBuckle Yeat(バックル・イート)というB&B(ベッド・アンド・ブレックファスト)です。
Near Sawreyを訪れるとわかりますが、実際はHill Topの白い木戸はあひるたちの左側にあるので、あひるたちは逆を向いています。
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パイが2つあったおはなし13ページの挿絵です。犬のDuchess(ダッチェス)がお茶会の招待状を受け取るシーンで、Buckle Yeatが彼女の家として描かれています。
こねこのトムのおはなしで描かれているBuckle Yeatには花が描かれていませんでしたが、この絵は花々がきれいに咲き誇っています。
実際のBuckle Yeatも花がいっぱいでかわいらしい家でした。
ビアトリクス・ポターもここから手紙を出したかな?ニア・ソーリー村唯一のポスト
BEATRIX POTTER™ and PETER RABBIT™ © Frederick Warne & Co.,
The World of Peter Rabbit Postcard Book(ピーター・ラビットのポストカード・ブック)表紙です。Near Sawreyに唯一あるポストと、奥に見える木のゲートも描かれています。
このポストに投函しても何も特別なことはありませんが、ピーターのようについここから手紙を出してしまいます。
ポストカードブックの詳細・購入はこちらから>>ビアトリクス・ポターの終の棲家カースル・コテージ
Castle Cottage(カースル・コテージ)は個人の家です。
以下の写真は住人のMrs. Mandy Marshall(マンディ・マーシャルさん)に許可を得て撮影しました。勝手に入ることはできません。
彼女はブルーバッジ公認ガイドで、Castle Cottageを案内してくださいました。その時の様子は以下に記載しています。
カースル・コテージの門
BEATRIX POTTER™ and PETER RABBIT™ © Frederick Warne & Co.,
The Tale of Johnny Town-Mouse(まちねずみジョニーのおはなし)8ページの挿絵です。いなかのねずみのTimmy Willie(チミー)が門の前に置かれている野菜かごに入ってしまう場面です。
昔、農家は絵のようなかごに収穫した野菜を入れて町へ運んでいました。
門の特徴である矢印のようなデザインで、当時のものだとわかります。
カースル・コテージの階段
BEATRIX POTTER™ and PETER RABBIT™ © Frederick Warne & Co.,
まちねずみジョニーのおはなし31ページの挿絵です。ねずみたちが食事を取りに行く場面です。
手すりが壁にくっついています。この家は人間の家として描かれているので、階段が大きく見えます。
ビアトリクス・ポターの夫ウィリアム・ヒーリスが働いていた町ホークスヘッド
BEATRIX POTTER™ and PETER RABBIT™ © Frederick Warne & Co.,
まちねずみジョニーのおはなし15ページの挿絵です。Hawkshead(ホークスヘッド)の特徴的な街並みである道の上にまたがる家が描かれています。
Hawksheadにはこの絵に当てはまりそうな場所がいくつかあり、迷路のような雰囲気です。
パイが2つあったおはなし24ページにも同じような建物が描かれています。
リビーがいとこのタビタおくさんのお店に向かう場面ですが、タビタおくさんのお店として下記のBeatrix Potter Galleryが描かれているので、地理的にも合っています。
Hawksheadを訪れた時の記事はこちらをご覧ください。
ウィリアム・ヒーリスの仕事場、ビアトリクス・ポター・ギャラリー
BEATRIX POTTER™ and PETER RABBIT™ © Frederick Warne & Co.,
パイが2つあったおはなし25ページの挿絵です。
現在この建物はBeatrix Potter Gallery(ビアトリクス・ポター・ギャラリー)として運営されていますが、昔はBeatrix Potterの夫William Heelis(ウィリアム・ヒーリス)の弁護士事務所でした。
窓と入り口の位置、2階部分が少し出っ張っている所や壁の横線が同じように描かれています。
ビアトリクス・ポターが夏休みを楽しんだダーウェントウォーター湖
Derwentwater(ダーウェントウォーター湖)は湖水地方北部の湖で、景色が素晴らしいことで知られています。
Beatrix Potterは家族と一緒に避暑に来ていました。
Derwentwaterを訪れた時の記事はこちらをご覧ください。
BEATRIX POTTER™ and PETER RABBIT™ © Frederick Warne & Co.,
りすのナトキンのおはなし15ページの挿絵です。リスたちが食料を取りにふくろう島へ渡る場面です。
ふくろう島の実際の名前はSt Herbert’s Island(セント・ハーバート島)と言います。
絵ではそんなに遠くなさそうに見えますが、実際に見てみるとリスがいかだに乗って渡るなんてとんでもないと思うくらい遠くに見えます。
BEATRIX POTTER™ and PETER RABBIT™ © Frederick Warne & Co.,
ベンジャミンバニーのおはなし23ページの挿絵です。畑の向こうに見えている湖がDerwentwater(ダーウェントウォーター湖)です。
写真の家には湖に沿って庭があり、挿絵はその石垣からの景色となります。
この家は現在個人所有で、一般公開していません。
ビアトリクス・ポターが描いた絵と現在の風景を比較してみて
Beatrix Potterが描いた絵と実際の風景を比べてみると、昔も今もあまり変化していないことがわかります。
それが湖水地方の良い点で、Beatrixが絵本の印税で湖水地方の農場などを購入し、保全のためにNational Trust(ナショナル・トラスト)に寄付をしたからこそ、比較ができるのですね。
ビアトリクス・ポターが描いた風景は以下の電子書籍に詳しく書いていますので、湖水地方を旅行される方はぜひお読みください。